退路なし

職場からサイト警察署へ向かう道中で、警察官(以降刑事と言います)からいろいろと世間話を持ち掛けられましたが、もうそれに対応する余裕は自分にはありませんでした。

職場と家族、いずれも僕が知られたくなかった盗撮犯という現実をすでに知っているのです

まだ妻とは直接話していませんが、いきなり刑事から夫が盗撮犯であると聞かされて、考えてもみなかった状況に立たされていると思うと申し訳がない気持ちでいっぱいでした

当然妻には何の非もありません

職場の方はおそらく解雇になるだろうと考え、今まで通りの生活ができなくなる可能性が高いなか、家族をどう養っていこうか、あるいは保険金をあてにして最悪の判断をしなければならないか、車内で必死に考えていました

妻と結婚してからこれまで必死で積み上げてきたものが、僕の身勝手な行いのせいで崩れ落ちてしまうという現実を受け止めるにはまだ時間がかかりそうでした

隣にいた刑事も、最初はうっとおしいくらい話しかけてきましたが、次第にそれもやめて車内は静寂に包まれたまま警察署へ向かいます

その中で刑事の一人から、身元引受の件で弟と連絡が繋がって、迎えに来てもらう段取りができたと教えてくれました

これから向かう警察署に家族が待っている

より一層気持ちが重くなりました

そしてそのあとは妻とも顔を合わせます

何もかも始まったばかりでした

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